マイホーム(居住用不動産)を売却したときの譲渡所得が発生した場合の3つの特例
マイホームを売却したら、譲渡所得または譲渡損失が発生します。簡単に言えば売却益又は売却損です。
ここで譲渡損失が発生すれば、所得税は発生しません。逆に、譲渡所得が発生すれば、所得税がかかってきます。
マイホームを売却しようと考えた場合、少しでも高く売りたいと考えるでしょう。そのために、家をリフォームするとか、バリアフリー化することでいくらか費用が発生します。お金をかけてリフォームした結果、高く売れたとしても多額の税金を取られるのはちょっとイヤですよね。
しかしマイホームを売却した場合に以下のように、なるべく税金を発生させないような措置が設けられています。
1.3,000万円の特別控除
2.所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
3.特定の居住用財産の買い換え特例
住宅の購入や建築は経済の活性化につながりますので、国も税制面で優遇することで経済活性化を図ろうとしているのです。
また、現在、深刻化している「空き家問題」の解決にもつながります。
今回は譲渡所得が発生したときの上記3つの特例について解説したいと思います。
1.3,000万円の特別控除
土地や建物等の不動産を譲渡したとき、譲渡所得が発生します。譲渡所得は、以下の計算式で表されます。
譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
※収入金額とは買主から受け取る金銭の額です。 ※取得費は、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料等の額です。
※譲渡費用とは、仲介手数料や印紙税等、土地や建物を売るために直接かかった費用を言います。
計算した結果、譲渡所得がプラスになる場合は譲渡所得、マイナスになる場合は譲渡損失となります。
譲渡所得が発生した場合には所得税が発生することになります。しかし、なるべく税金が発生しないような特例があり、その一つが3,000万円特別控除と言われるものです。
つまり、譲渡所得が発生しても、3,000万円までなら課税所得は発生しないことになります。
計算式で表すと以下のようになります。
課税譲渡所得 = 譲渡所得 – 3,000万円
課税譲渡所得がマイナスなら譲渡所得税はかかりませんが、プラスであればその金額に税率を掛けた金額を納税しなければなりません。
ほとんどの方は、マイホームの譲渡で3,000万円以上の所得が発生することはないと思われますので、この特例の適用により納税額が発生することはないでしょう。
なお、納税額が発生しない場合でも、譲渡所得の確定申告は必要ですので注意してください。
3,000万円特別控除を適用してもなお、課税所得が発生する場合には、その金額に税率を掛けた金額を納税しなければなりません。この税率についても次に解説する軽減税率の特例があります。
2.所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
3,000万円特別控除は所有期間の長短に関係なく適用できますが、譲渡所得が発生した場合の税率は長期と短期で異なります。
・短期譲渡所得(所有期間が5年以下):39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
・長期譲渡所得(所有期間が5年超):20.42%(所得税15.315%、住民税5%)
そして、所有期間が10年を超えた場合、さらに税率が軽減される特例があります。
これが「所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」です。
税率は14.21%(所得税10.21%、住民税4%)となります。
この特例により、かなり納税額が抑えることができます。
ただし、軽減税率が適用できるのは譲渡所得が6,000万円までであり、6,000万円を超える場合は、超えた金額に対する税率は上記の長期譲渡所得に対する税率が適用されます。
3.特定の居住用財産の買い換え特例
新しくマイホームを買い換えるために、現在住んでいるマイホームを譲渡する場合もあります。このとき、譲渡した旧マイホームに住んでいた期間が10年超で譲渡所得が発生した場合、多額の所得税が発生すると、買い換えるマイホームの資金が足りなくなる場合もあるかもしれません。このことを避けるための措置として「特定の居住用財産の買替え特例」があります。
例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、旧マイホームの譲渡で4,000万円の譲渡益が発生しますので、これに対して譲渡所得税が発生します。
しかし、特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡所得への課税は行われません。
ここで注意していただきたいのは、譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べることができるということであって、譲渡益が非課税となるわけではありません。
つまり、買い換えた7,000万円の新マイホームを将来8,000万円で譲渡した場合、差額の1,000万円が課税対象となるわけではなく、特例の適用を受けた年に課税されなかった4,000万円も加えた5,000万円が課税対象となります(旧マイホーム譲渡時の4,000万円の譲渡所得は新マイホームの譲渡時まで繰り延べられることになる)。
この場合、買い換え特例適用後、新マイホームを売却する時に多額の税金が生じる可能性があります。
上記の10年超の軽減税率や、新たに買い換え特例を利用できるように、新たに買い換えた新マイホームを10年超所有するといった長期的な計画を持っておく必要があります。
なお、この買い換え特例を適用した場合、3,000万円特別控除は利用できません。従って、マイホームの買い換えをお考えの場合、どちらの特例を利用した方が得かを検討するようにしてください。
4.まとめ
今回は譲渡所得が発生した場合の税制面で優遇されている特例について解説しました。住宅を購入売却する際には、その所有期間がけっこう重要になってきますので、購入した時点である程度、長期的な視点をもつことも大切になってきます。
また、今回紹介した3つの特例それぞれについては、ここでは書ききれないくらい、細かい要件がありますので、要件に合致しているかについて国税庁HPで確認するか、税務署又は税理士に相談するようにしてください。
ちなみに、上記の3つの特例を使えば、税金はゼロ、もしくはかなり低く抑えることができますが、国民健康保険料や介護保険料などの計算には関係ありませんので、翌年の保険料への影響には注意が必要です。
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