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サラリーマンの「特定支出控除」が全く使えない制度である理由

常識から考えて、サラリーマンの仕事着であるスーツは個人の経費として認められませんよね。なので、ほとんど全ての方が、自腹を切ってスーツを購入しているでしょう。

しかし平成23年度に制定され、その後も多少の改正を加えた『特定支出控除』という制度があります。
この制度を利用することにより、サラリーマンでもスーツを経費として計上し節税できる可能性があります。

しかし、実際は非常に条件が厳しくほとんど利用されていないのが現状です。

なぜこの制度はほとんど利用されていないのでしょう?

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まずは特定支出の対象となる支出から。


特定支出控除の対象となる6つの支出

以下6つの項目が、これに該当します。

1.通勤費(通勤のための支出)
2.転居費(転任に伴う転居のための支出)
3.研修費(職務の遂行に直接必要な技術又は知識を習得するための研修に関する支出)
4.資格取得費(職務の遂行に直接必要な資格を取得するための支出)
5.帰宅旅費(単身赴任に伴い、赴任先と家族の居住する場所とを移動するための支出)
6.勤務必要経費(65万円まで)
イ)図書費(職務に関連する図書を購入するための支出)
ロ)衣服費(勤務先において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出)
ハ)交際費等(職務上関係のある方に対する接待等のための支出)

スーツは衣服費に該当しますのでその購入費用は特定支出に該当し経費として認められるのですが・・・
スーツに年間65万円って・・・!

当初はスーツなど衣料費も控除の対象となることから注目されていましたが、
けっこうな金額を自腹で支出しなければならないことが、この制度を使いにくくしている要因の一つでしょう。

また、以下の2点がこの制度の利用をさらに難しいものにしています。

1.金額のハードルが高いわりに、節税効果は大きくない。
特定支出控除を受けるには、該当する特定の支出が年間で給与所得控除額の1/2を超える必要があります。
年収600万円のケースなら、給与所得控除が174万円ですから、その半分87万円以上の「特定の支出」をすれば節税が可能ということです。

しかし、スーツ代、飲み代、書籍代など全部合わせても、それだけの金額に達するケースはあまりないように思えます。

また、仮に100万円分支出したとしても、所得控除額は100万円-87万円=13万円で、
所得税・住民税合わせても大体13万×20%=2.6万円しか税金は安くなりません。
 (※所得税10%、住民税10%と仮定)
自腹で100万円支出して安くなる税金がたったの2.6万円・・・。

この時点で全く使えない制度だと判断できます。

そもそも仕事に直接必要な「研修費」や「図書費」、「衣服費」、「交際費等」というのは、本来、会社の経費にしてもらうことをまず考えるでしょう。
 
2.手続きが面倒くさい
また、確定申告をするにあたり、会社が仕事に必要な経費だという「証明書」を発行してもらわなければなりません。

「スーツは仕事で使いますので認めてください」と言ったところで、果たして会社はOKを出してくれるでしょうか?

これを認めると社員の多い大企業なら、事務作業が増えて通常業務に大きく支障をきたすのではないでしょうか。
よっぽど社内の風通しが良く、社長との距離が近い小規模な会社であれば、可能性はありそうですけど。

これらの事を踏まえると、決して「使い勝手の良い制度」とは言えないと思います。
ほとんど利用されていないのもうなずけますね。

とはいえ、数少ないサラリーマンの節税。この制度を利用しようとして多額の支出をするのは本末転倒ですが、例えば、転勤や単身赴任を予定している方は、その他の支出も合算すれば控除に届くかもしれません。
このような際に、「そんな制度があったなぁ」と思い出してみるくらいがちょうど良いでしょう。